このごろ少し、分が悪い。
銀時はなんだか不満だ。やることやって開き直れない「俺ほんとはこんなことしたくねえんだチクショウでも」みたいな顔が好きだったのに。
このところはすっかり開き直ったらしい土方は、単純にストレートに気持ち良いこと推進派だ。相手している自分はすっかり推進され派だ。それはそれで良いことなのだがやはり。
あまり主導権を取られたくないものだ。なんか。
つまんねえし。
「ノらねえの?」
なんつって向けて来る真顔が整いすぎている。そいえばこいつ顔はいい男だったんだよなあ、などと思っている。別に良い男と寝て楽しいかっていうとなんか違うわけだ。
と、思っきり足を開きながら思うのも間違ってるか?
「……なんだかなぁ」
「なんだよ」
しかし気にかける風もなく、土方はぐいぐい腰を押しつけてきた。強く貫いてくるわけでもない。押しつける、というのが本当に相応しい動きだ。なかでじりじりと揺らされて、銀時はかすかに息をもらした。
上げられた足の下に見える顔が、なんだか憎らしくなってきた。
「いやあれよ、おまえがノリすぎてね? なんつか萎えてきたというかなんというか盛りの少年じゃねえんだからもちっと」
すると土方は眉を寄せた。
「そっちこそ黙ってろよ。テメェが喋りだすと萎えんだよこっちは」
「いやいや俺の萎えを聞いてちょっと。そのまえに俺はだな、おまえの、……ン」
実力行使で口を塞がれた。下の口も塞がれてるもんだから苦しいのも当然だ。なんだか殺されそうな雰囲気になってきた。こんなことで死ぬのはちょっと嫌だなあ。
ちょっとっていうか凄く嫌だぞコラ。
とりあえずもがいてみると、足首を掴んで更に開かれた。
「でっ」
待て待て、痛ぇってそれはマジでいくら身体が柔らかいつってもこちとら体力の衰えを感じつつある年頃ですよ。
「ん? 少し黙ってろ」
何様ですかあなたは。
「あとでイチゴ大福奢ってやる」
「……」
「で、こっちな」
「……あ、それ……ちょっ……と、ヤバ」
「ヤバいからやってんだろーが」
「ごもっともで……うァ、」
後ろから何度も来られて、なんか息が詰まるどころじゃなくなった。舌を噛みそうになって黙る。ついでに揺らされる身体が嫌で、シーツにしがみついてみたがどうにもならない。
ずるずると強く擦る場所が変わって、すっ飛んでしまいそうになった。何って、なんかが。何か、わけのわからないものが。
痺れは犯された場所からきれいに背中を通って、びりびりと頭に響いた。もうこれ以上耐えられないと思うのに、次には求めている。顔が見えないだけ、もう不条理にただ突っ込まれている気になった。
なんかその、もう局地的な問題でもない。
身体全部持っていかれそうな気がして、銀時は悲鳴に近い声をあげた。そうだった、などと頭の端で思っている。
けっこう実は流されやすいのは自分の良いところかもしれない。
だがしかし、相手が吹っ切られるとどうにも。ああダメだ。ダメだって。身体は気持ち良いけどやっぱ腹立つだろこれは。
相手が気持ちよさそーな顔をしているのを見るのが好きだ。もう正気も何もねえような顔が。この相手ならば特にそうだ。そんで、勝ち誇って笑ってやりたいのだ。
(あ、ちくしょう)
だが必死に求めてきている、無理なくらい必死に入り込んでこられる。それだけでそれは嬉しい。なんてことだろう。
どこかで間違えた。こんなのはまるでこっちがメロメロにハマってるみたいだ。そんなのは御免だ。ちくしょう、そのうち見てろよ。ヒィヒィ言わせてやる。もう許して、なんつって涙目で。
どう仕返してやろうかと考えていたら更に余計に興奮してきた。
(……アホか俺は?)
しかしまあ……いいやとりあえず気持ち良いから。でも顔が見てぇな顔くらいは。気持ちよさそーな顔。
ここから無理に首を曲げるのも苦しそうだ。動きを止めさせて、顔を上げるというのも負けたような気がする。
(あ、そっか)
なんでこんなことになったのか、いまいちまだ納得できないところはあるが。
吹っ切れてみれば楽しい。いつもふざけた男が、余裕もへったくれもない声をあげ、傷だらけの身を捩って悶えるのを見るのは。
よろしくない場所に足突っ込んでる気もするのだが。
とにもかくにも上位に立てるのは楽しいものだ。もちっと虐めてやれ。
「良くねーの? やめるか?」
わざと呆れたように言ってやると、ひくりと目の前の背中が揺れた。それにしても傷跡があるのは興ざめだと思っていたが、そうでもない。赤みが増してくると、その傷がひどく浮かび上がり、熱を持って見えるのだ。
おまけに膨れ上がった痕を指でなぞると、たまらないような反応を見せる。まさかまだ痛みがあるほどの傷じゃない。ただ、感覚ばかりが鋭敏に残っているのだろう。
「なぁ」
呼びかけると同時に腰を揺すった。銀時の中は本人よろしくひねくれていて、抗っているのか甘受しているのかわからない。とにかくも心地よく愛撫され、土方は湿った息を吐いた。
銀時も大きく息を乱し、シーツに頬を押しつけるようにしている。どんな顔をしているのだろう。這った姿勢をわざと崩させるように、強く身体を貫いた。だがふと、先ほどよりも深く入り込んだ身体が不思議で、尻を割り、交合した部分をはっきりと見つめてみる。
赤く充血したそこが、ぬるぬると滑ってどうにか土方のものを受け入れている。視覚から刺激されて、また快楽が増した。腰を支えていた指が濡れている。少し光る肌が、噛みつきたいような衝動を引き起こした。
この喜びはつまり、征服している、ということなのだろう。
しかし銀時が何を考えているのか、少し不審になった。さきほどから文句を言うのもやめている。呼吸は荒く、声は聞こえていたが、そんな甘い相手ではない気がする。いつも何か、とんでもないことをして土方を怒らせるのだ。
表情を読もうとしても、銀時はシーツに顔を押しつけている。
ぎしぎしと軋む動きにも横顔さえ見せない。どんな顔をしているのかと、想像すると身体が高まった。まるでとろけきった顔をしてくれているのなら、是非見たいところだ。
深く入り込んだまま、中を掻き回しながら背に胸を重ねた。手を伸ばして髪を軽く引く。いよいよ強く、銀時は顔をシーツに押しつけたようだ。
強情だが、どこかかわいいと言えなくもない。機嫌の良さに後押しされて、土方は銀時の身体に腕を回した。顔どころではなく、身体ごと、すがる場所も無くしてやるつもりだった。
「……ハ、……う」
引き上げて膝の上に乗せると、苦しかったのか銀時が呻いた。
さすがに哀れになるような声だ。反省して腕に重みを引き取ってやると、深く息を吐いた。背中に触れるだけでわかるような、深い呼吸だ。どこか甘やかに聞こえ、それこそ顔を見なければ我慢できない気分になる。
上半身を捻るようにして振り向かせた。
瞳が遭ったとたんに後悔する。勝ち誇ったように細められた視線は、全く気に食わない。楽しげに土方の顔を見ている。思いきり嫌な顔をしてやっても、やはり楽しそうだった。
「……この野郎」
罵倒も気にかけないように、銀時は楽しげだ。口笛まで吹きそうだった。その唇は痛々しいほど、濡れて赤くなっているのに。
後悔させてやる、と土方は思った。
その前に銀時が身体を押しつけるように倒してくると、土方は位置を譲ることになった。背中がベッドに落ちる。土方を見下ろし、楽しげな銀時が同じことを言った。
後悔させてやろうか、と。
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